犬の関節炎の原因・サインは?|疾患の種類・症状・予防や治療法まで詳しく解説

犬の関節炎は、関節に炎症が生じて痛みや可動域の低下を招きます。この記事は、飼い犬の足腰が弱ってきて関節炎になっていないか心配であったり、関節炎にならないための予防策を知りたいと考えたりしている人に向けた内容をお伝えします。具体的には犬の関節炎、そのサイン、原因、疾患の種類、なりやすい犬種など幅広く取り上げました。 さらに、関節炎にならないための予防策、治療方法も詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

犬の関節炎とは?

犬の関節炎とは、犬におけるさまざまな関節疾患の総称です。関節は日々の生活で徐々に衰えていき、高齢犬になるほどその影響を受けて関節炎を引き起こしやすくなります。また、関節炎は膝や肘、股関節、肩などで起こりやすく、前十字靭帯の損傷といった変性性関節疾患と細菌による感染症関節炎などがあります。

じつは犬の関節炎に気づいていない飼い主さんが多い!

犬の関節炎に気づいていない飼い主さんは多いです。その割合は、日本大学生物資源学部獣医学科・枝村一弥准教授の調査結果から判明しています。日本大学動物病院に来院した犬(10歳以上・524頭)のうち、12歳以上の犬の45%以上は変形性関節症または変形性脊椎症という関節炎であることがわかりました。 また、そのうち変形性関節症に気づいていなかった飼い主さんの割合は約50%となっています。変形性脊椎症については8%弱の飼い主さんしか気づいておらず、多くの場合で犬の症状を見逃していることがわかりました。

※引用:高齢動物で増加している運動器疾患の健康維持プログラム|セミナーアーカイブ|QIX(株式会社キックス)

犬の関節炎のサイン・症状とは?

犬の関節炎のサインや症状には以下があります。

  • 運動能力の低下
  • 寝起きなどの運動開始時に動きにくそうにしている
  • 遊びたがらない、散歩に行きたがらない
  • 痛がって鳴く
  • 足を引きずる
  • 関節を舐めたり噛んだりする
  • 後ろ足でぴょんぴょん飛ぶように歩く

飼い犬が関節に異変や痛みを感じると、以上のような行動をとるようになります。普段とは違う行動をとっている場合は、関節炎を疑ってみてください。

犬の関節炎が起こる原因

ここでは、犬の関節炎が起こる原因をご説明します。犬の関節炎には、原発性と続発性のふたつの原因があります。

原発性(一次性)

原発性の関節炎は、加齢や関節の不安定により発生するものです。原発性の関節炎は、原発性変性関節症と呼ぶこともあり、加齢により関節軟骨がすり減ることで起こります。高齢犬の関節炎は原発性の場合が多いですが、若い犬でも起こる可能性があります。

続発性(二次性)

続発性の関節炎は、過度な負担や病気が原因で起こるものです。犬同士の喧嘩や外傷事故、股関節形成異常などにより、関節軟骨の変化が起こり、関節機能の低下、変形性関節症に至ります。なお、原発性が原因であるものも含めて、変形性関節症は慢性疾患であり完治が難しくなります。痛みと治療に長い間付きあうこととなるため、未然に防ぎたいところです。

関節炎になりやすい犬の種類

犬の関節炎にはさまざまな疾患があり、罹りやすい犬種は以下のとおりです。

  • 膝蓋骨内方脱臼:トイプードル、ヨークシャーテリア、プードルなど
  • 椎間板ヘルニア:ミニチュアダックスフンド、フレンチブルドッグ、シーズー、ビーグルなど
  • 股関節形成不全:ポメラニアン、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、ボーダーコリーなど
  • レッグ・ペルテス病:トイプードル、ヨークシャーテリア、そのほかの成長期の犬など

以上のように、関節炎や関節病により罹りやすい犬種が異なります。

犬の関節炎にはどんな疾患がある?

ここでは、関節炎のさまざまな疾患とその特徴、原因、治療方法をご説明します。飼い犬の犬種などをもとに、それぞれの疾患について把握してください。

膝蓋骨内方脱臼

膝蓋骨内方脱臼とは、膝蓋骨が大腿骨から脱臼する疾患です。膝蓋骨が脱臼する原因には、骨の成長異常などの先天的な場合もあれば、打撲や肥満などの後天的な場合もあります。主な症状では片足をけんけんするように歩いたり膝関節が腫れたりします。治療するには、外科療法と保存療法があります。 しかし、基本的には外科療法でしか完治せず、症状レベルとしてグレード2以上は手術の適用となります。保存療法としては体重の減量や滑らない床へのリフォーム、段差の少ない環境にするなどがあります。

前十字靭帯断裂

前十字靭帯断裂は、後肢の膝関節にある前十字靭帯が完全に、もしくは部分的に切れてしまう疾患です。外傷により徐々に身体が変形してしまうことで起こる疾患です。外傷が起こる原因には、交通事故やスポーツ(遊び)によるものやゆっくりと慢性的に靱帯が変形していくものがあります。 症状としては、後ろ足をあげて歩いたり、座ったときにかかととお尻が離れたりします。治療方法は鎮痛剤などによる内科療法、断裂して不要となった前十字靭帯をトリミングしたうえで膝関節を安定させる、外科療法があります。

股関節形成不全症

股関節形成不全症は、骨盤と大腿骨に緩みが生じて変形性関節症が起こる疾患です。発症する犬種は大型犬が多くなっており、70%ほどは遺伝的な要素があるとされています。残りの30%は環境要因によるものであり、肥満が原因となることが多いです。疾患に罹った場合、お尻を振るように歩いたり段差を嫌がったりします。 また、うさぎ跳びのように歩行することもあります。治療するには、体重コントロールやリハビリなどの保存療法と、人工関節手術などの外科療法があります。

肘関節異形成症

肘関節異形成症は、前腕部と上腕部を連結する肘関節に異常が生じる疾患です。肘関節は、橈骨や尺骨、上腕骨の3本から構成されており、どこか1本に異変が起きると肘関節異形成症に罹ります。過度なストレスが原因で発生することも考えられます。肘関節異形成症に罹った犬は歩き方がおかしかったり運動を嫌がったりするサインがみられます。 前脚の形がおかしい、関節に水が溜まるなどの症状が発生することも多いです。治療法には、外科手術や安静療法、投薬治療などがあります。

関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)

関節リウマチは、免疫異常が原因で犬自らが自分の関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。発症する原因ははっきりとわかっておらず、完治の難しい病気として認識されています。また、最終的には関節が溶けて足に激しい痛みを伴う場合もあります。罹患すると、発熱や食欲の低下、リンパ節の腫れなどの症状がみられます。 治療は各種免疫抑制剤を関節に投与して、免疫反応を抑え込みます。補助として胃の保護薬などを使用する場合もあります。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、脊椎の椎骨の間にある椎間板が飛び出して脊髄を圧迫することで起こる疾患です。脊髄が圧迫されると神経に異常が生じて痛みを起こします。また、椎間板ヘルニアはダックスフンドやビーグルなどの特定の犬種に起きやすいハンセン1型と、加齢により引き起こるハンセン2型に分類されています。 罹患した犬は、後ろ足が動かない、腰を上げることができないなどの症状があります。治療方法は外科療法と内科療法であり、中程度以上の症状の場合は外科療法を選択します。

レッグ・ペルテス病

レッグ・ペルテス病は、若齢の小型犬に発症する大腿骨の骨頭が壊死してしまう疾患です。4〜12カ月目までの成長期、特に6〜7カ月目までに発症することが多くなります。この疾患は、大腿骨の骨の血行阻害により発症しますが、その原因はさだかではありません。発症すると、足を使わなくなるため筋肉量の減少から後肢が細くなります。 足をかばいながら歩くような様子がみられたら発症を疑ってもいいでしょう。治療法としては、一度壊死した大腿骨の骨頭は再生しないため、骨頭を取り除く・もしくは人工関節に置き換える手術が必要になります。

犬が関節炎にならないための予防策

ここでは、飼い犬が関節炎にならないための予防策をご紹介します。予防策には以下の3つの方法があります。

適度な運動で筋肉をつける

関節炎にならないようにするには、関節を支える筋力をつけることが有効です。そのために毎日の散歩や適度な運動を行うようにしてください。なお、適度な散歩や運動は肥満防止にもつながりさまざまな病気の予防にもなります。

肥満を避け適正体重をキープする

肥満になると関節に負担がかかり、関節炎のリスクが高まります。そのため、適正体重を保つことが大切です。具体的には食事のコントロールが重要であり、ご飯のあげ過ぎには注意してください。適度な運動も心がけるようにしましょう。

関節炎予防に効く食材・栄養素を摂る

関節炎予防に効く食材や栄養素をとることもポイントです。関節炎予防に効果が期待できる栄養素は、タンパク質やビタミンC、カルシウム、グルコサミンなどがあります。一方で炎症を促進してしまうナス科の食品は避けるようにしてください。具体的な料理としては、手羽先などの骨を煮たスープがおすすめです。 ゼラチンやコラーゲンが摂取できるため、関節疾患や予防に効果があります。

犬の関節炎を治療・ケアする方法と対策

ここでは犬の関節炎を治療、ケアする方法、さらに対策を紹介します。以下のさまざまな方法により、関節炎を改善することが可能です。

抗炎症薬(非ステロイド性抗炎症薬など)の投与

抗炎症薬とは、痛みを抑えて関節機能を回復する薬剤です。抗炎症薬の投与は消化管に対する副作用が起こる可能性もあり、粘膜保護剤を同時服用することも多いです。なお、抗炎症薬の投与方法には内服と注射があります。

レーザーによる痛みの緩和

レーザーを使って関節炎の痛みを緩和することが可能です。レーザーの活用は出血量を減らすほか、衛生面で優れているというメリットがあります。

ステロイド・免疫抑制剤による治療(免疫介在性の場合)

手術をしない内科療法には、ステロイドや免疫抑制剤の利用があります。痛み止めだけではなく、解熱効果があることも特徴です。ただし、ステロイド系の痛み止めは、副作用があるため簡単に利用することはできません。

外科手術

内科療法で治療が難しい場合は、外科手術を行うことがあります。外科手術では、関節固定手術や人工関節への置換手術などがあります。

リハビリ運動/減量

リハビリ運動は、理学療法士とともにプログラムをこなします。機材などを使って飼い犬が楽しくリハビリ運動ができるため、理学療法士に任せることが有効です。また、痛みがあると活動しなくなり肥満につながるため、減量や体重コントロールも必要となります。

飛び降りなど関節に負担がかかる激しい運動の制限

ジャンプや段差のあるところからの飛び降りなど、関節に負担がかかる激しい運動は制限するようにすると関節炎の予防や治療につながります。

フローリングなど滑りやすい場所への対策

フローリングなどの滑りやすい場所は、関節に負担をかけるため改善が必要です。滑りやすい場所にはマットを敷いたりコーティングしたりするなどの対策を行ってください。特にカーペットやコルク材などを敷くと有効です。

食事療法

抗炎症に適する栄養素には、DHAやEPAと呼ばれるオメガ3脂肪酸や、オメガ3脂肪酸と相乗効果のあるビタミンEなどがあります。オメガ3脂肪酸は体重5〜10kgあたり1日300mgを目安に摂取してください。関節炎に効く食材を含んでいる納豆入り鮭チャーハンを作ってあげることもおすすめです。

サプリメントの服用

関節を保護するグルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸を含むサプリメントも販売されています。グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸は関節に存在する成分であり、軟骨の生成に役立ちます。食事療法に加えて、サプリメントの服用を行うと、関節炎の治療や予防に効果的です。

まとめ

犬はさまざまな関節疾患に罹る可能性があります。運動能力の低下、食欲不振などの症状が出たら関節炎のサインであるため、かかりつけ医に相談してみましょう。なお、犬が関節炎になる原因には、フローリングなどの滑りやすい環境があり、コーティングなどの対策も必要です。

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